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基礎知識

世界遺産の基礎知識 No.1

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記念すべき第1回目は世界遺産の基礎知識についてまとめていきます。とっつきにくい内容ですが、世界遺産を知る上で欠かせないパートです。

世界遺産検定では出題範囲のうち20%〜25%がここからの問題。そして級が上がるにつれて引っ掛け問題も増えていくのでしっかりと身につけておきましょう。

基礎知識はかなりボリュームがあるので8回に分けてやっていきます。

世界遺産とは

世界遺産とは、1972年に開催された第17回ユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき、世界遺産リストに記載されている顕著な普遍的価値(Outstanding universal value)をもつ建造物や遺跡、自然環境のことである。そしてこれらの遺産を人間の手によって破壊されたり環境破壊や自然によって風化していかないように保有国はもちろんのこと国際的な協力と援助の下に保護していくことが世界遺産の意義。

難しい単語ばかりで解りづらいんですが、、簡単に言うと

「世界遺産=地球と人類の宝物」。

だから、国や人種関係なくみんなで守っていこう!という感じでしょうか。

世界遺産の登録数は1199件。文化遺産が933件、自然遺産が227件、複合遺産が39件(2023年9月現在)。

日本の世界遺産は、2021年オンラインにて開催された第44回世界遺産委員会拡大会合で、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が自然遺産、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が文化遺産に登録され、文化遺産20件、自然遺産5件、合わせて25件が登録されています。

世界遺産誕生のきっかけ

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが残した「エジプトはナイルの賜物」という有名な言葉が示すとおり、毎年夏に洪水を起こすナイル川が肥沃な土壌をエジプトに運び文明が発展した。しかし19世紀に入り灌漑設備が整い、洪水は住居や農地を押し流し、被害のほうが大きくなった。

1901年にアスワンダムを建設したが、それだけでは力不足でエジプトのナセル大統領は1952年にソ連の支援を受けてナイル川氾濫防止と電力供給拡大のためにダム建設計画を立てた。しかし、この計画通りに建設をすすめると、アブシンベル神殿やイシス神殿などのヌビア遺跡群が水没してしまう。これではいけないということで、ナセル大統領から依頼を受けたユネスコがヌビア遺跡群救済キャンペーンを実施。世界中に呼びかけ50ヶ国と個人の協力により救済事業が始まった。

アブシンベル神殿は、1つ20〜30トンのブロック1万6千個に切り分けられ、1964年から1968年まで5年の歳月をかけて60メートル高台に移築。アスワンダム建設によって半水没状態だったフィラエ島のイシス神殿はアギルキア島に移築された。

このキャンペーンを機に価値のある遺跡や建設物を保有国のみではなく人類共通の遺産という考えが初めて生まれ、1972年のユネスコ総会へとつながり世界遺産創設のきっかけとなった。

世界遺産条約とその目的

正式名称は「世界の文化及び自然遺産の保護に関する条約」。8章38条から成る。

世界遺産条約は1972年第17回ユネスコ総会にて採択。その時の議長は日本人の萩原徹。翌年にアメリカが最初に世界遺産条約を批准し、1975年20ヶ国がそれに続いた。2019年、締約国は193ヶ国でほとんどの国が世界遺産条約に批准している。

※批准=同意

世界遺産条約は、前項でも記載したが遺産の破壊や損傷から保護、保全するために必要な国際的な協力、援助体制の確立を目的とする。

条約の主な内容は、自然遺産と文化遺産の定義世界遺産委員会の設立、世界遺産基金の設立、世界遺産リストの作成危機遺産リストの作成国際的援助、教育・広報活動に努めることなどが規定されている。

これまで文化遺産と自然遺産は別々に保護していたが、文化と自然は切り離すことができないものであるから世界遺産条約ではひとつの条約の中で文化遺産と自然遺産を保護するもので、人類の歴史と自然環境はひとつのものであると考えている。

日本が批准したのは、ユネスコ採択から20年経過した1992年。日本の参加が遅くなった理由は、日本の文化財はすでに文化財保護法できちんと管理されているため世界遺産登録するメリットを感じなかったことと、膨大な拠出金が問題とされていたとか(2019年、日本の拠出金は約3億円)。

奈良文書

登録される世界遺産は、1978年から1990年代初頭までは西洋を中心とした昔の状態のまま保存されている風化しにくい石造りの建造物が多く登録されていた。日本の木造建築は腐食しやすく、これまでに何度も修復を重ねてきているため、真正性を証明することが出来ず、世界遺産の登録基準を満たさなかった。しかし、これでは西欧諸国が優遇され、アジアやアフリカなど、木や土で造られた文化遺産は登録されず世界遺産リストに不均衡が生じるため、1994年の奈良会議において、西洋の石の文化と日本などの木の文化の違いを明らかにした「奈良文書」が採択され、石の文化以外の文化遺産登録が推進された。

世界遺産条約締約国会議

全締約国による会議。ユネスコ総会会期中に開催される。

会議では、世界遺産基金への分担金の決定や世界遺産委員会の構成国の選出が行われる。

世界遺産委員会

世界遺産委員会は締約国の中から選出された21ヶ国で構成。1年に1度開催され、会合には諮問機関であるIUCN、ICOMOS、ICCROMの代表者やNGOの代表者も参加する。委員会の任期は6年だが、自発的に4年で任期を終えて再選はしないのが暗黙のルール。

委員会での主な審議内容は以下のとおり。

  1. 世界遺産の新規推薦物件および拡大登録申請物件の審議
  2. 危機遺産リスト登録物件の登録や解除
  3. 既存の世界遺産リスト登録物件の保全状況
  4. 世界遺産基金の運用
  5. 作業指針の改定と採択
  6. 活動報告書提出
  7. 国際的援助の要請の審査、その他

世界遺産の新規推薦物件および拡大登録申請物件の審議では、推薦された遺産を登録するかどうするか審議。登録情報照会登録延期不登録の4つで決議される。

登録
世界遺産にふさわしいと判断され、登録を認める決議。

情報照会
追加情報を求める決議で、次回の委員会で再提出し再度審査を受けることができる。

登録延期
追加で評価・調査を行う必要があるか、推薦書の本質的な改定が必要とされる決議。

不登録
世界遺産にふさわしくないと判断した決議で、基本的に再推薦は認められていない
例外として、別の登録基準で推薦書を作成しなおした場合はその限りではない。

世界遺産基金

世界遺産基金は、世界遺産保護のために世界遺産締約国に拠出金として納付させている。締約国は2年に1度支払わなければならない。アメリカの法律で、パレスチナを国家として認める国連組織には資金を出さないと規定されているため、ユネスコにパレスチナが加盟したことに反発し拠出金を凍結した。アメリカが最大の拠出国であったが、現在ではアメリカに代わり日本が最大の拠出国となっている。
※この問題により、アメリカとイスラエルはユネスコ脱退した。

基金は委員会が決定することのみに使用可能。主に災害や紛争で被害を受けた遺産への緊急援助、専門家による調査費のための準備援助、専門家の派遣費用、専門家の育成、教育、広報にかかる保全・管理援助の費用として使われる。

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