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世界最古の国立公園イエローストーン
ロッキー山脈に囲まれた標高2,000〜2,500mの盆地にあるイエローストーン国立公園は、アイダホ州とワイオミング州、モンタナ州にまたがり、縦に約102km、横に約87kmもあり総面積はなんと8,980km²もの広大な土地を有する。先住民のスー族から「霊気の満ちた場所」として恐れられていたこの土地に、かつて人が足を踏み入れることはなかったが、1869年から1972年にかけて調査が行われ、自然や動植物の豊かさから世界初の国立公園に指定された。「イエローストーン」の名前の由来は、イエローストーン大渓谷の岩肌が黄色だったことから名付けられた。
この土地では200万年前、120万年前、64万年前に大きな噴火が3回起きている。その時に、大量のマグマを噴出して巨大なカルデラが形成された。現在も地下のマグマは活発で近い将来噴火が起こると言われている(近いといっても数十万年以内という壮大な時間です)。
公園内には渓谷、滝、大草原、湖の自然景観や温泉、間欠泉、噴気孔などの熱水現象が1万ヶ所以上もあるなど豊かな自然環境にあふれていてる。植物は約1200種類、鳥類は200種以上、グリズリー、ヘラジカ、オオカミ、アメリカンバイソン、プロングホーンなどの哺乳類は約60種生息している。オオカミは約80年前に一度絶滅したが1995年に再導入。オオカミがいなくなったことによりワピチが増加して生態系が崩れたからだ。自然のバランスを取り戻すために再導入されて生態系はもとに戻った。しかし今度はワピチを追いかけて国立公園の外に出て家畜を襲うようになってしまい新たな問題が起きている。
イエローストーン国立公園はウィルダネスという概念のもとに自然環境を維持している。たとえ山火事が起きても積極的な消火活動はせず、自然にまかせて消えるのを待ち、自然の回復機能に委ねる。手を加えないという本来の生態系維持方法を取っている。
イエローストーン国立公園の5つのエリアと見どころ
イエローストーン国立公園は、ガイザー・カントリー、マンモス・カントリー、ルーズベルト・カントリー、キャニオン・カントリー、レイク・カントリーの5つのエリアに分けられる。
公園内の道路は8の字型に整備されていて、北側をアッパーループ(Upper Loop)、南側をロウアーループ(Lower Loop)、全体をグランドループと言います。
入場ゲートは北口ゲート、西口ゲート、南口ゲート、東口ゲート、東南口ゲートの5つあり、通年開いているのは北口ゲートのみでマンモスまでは車で移動可能。西口ゲート近くのウェストイエローストーンと南口ゲート近くのフラッグランチからは冬期間でもスノーコーチ(雪上車)でオールド・フェイスフルまで行くことができるが、個人(レンタカーなど)で行くことはできない。
園内すべてを見るには最低でも4日は必要。時間が限られている場合はロウアーループ、ガイザー・カントリーに的を絞ることをおすすめします。
ガイザー・カントリー
ガイザー・カントリーは、公園南西部に位置し、オールド・フェイスフル・ガイザーやモーニング・グローリー・プールなど多くの間欠泉や温泉が集まる地域。
オールド・フェイスフル・ガイザー / Old Faithful Geyser
HD video: Old Faithful geyser erupts / pmsyyz
オールド・フェイスフルは、イエローストーン国立公園の中で最も有名な間欠泉。「フェイスフル=忠実な」の名前の通り約70分おきに噴出する。最近は事情が変わって直前の噴出時間によって次の噴出時間がずれ込むことがあるので時間に余裕を持って見に行こう。
モーニング・グローリー・プール / Morning Glory Pool
Morning Glory Pool 1 / jerseygal2009
モーニング・グローリー・プールは朝顔(モーニング・グローリー)に似ていることからその名がつけられた。
中央部分は微生物も生息できないくらいの高温のために透明で、青くみえるのは空の色が映っているから。その周りの少し低温の部分には藻とバクテリアが発生し、酸性の場合には緑色になり、それ以外の時は黄色になる。
1960年頃まで、プールの色はもっと澄んだ青色だった。しかし近年、観光客が池の中にコインやゴミを投げ入れるため、底の通気口がつまり循環がうまく行かずに水温が下がってしまい、本来の青色ではなく茶色やオレンジ色、黄緑色に変色してまっている。そのため、Mornig Gloryではなく、Fading Glory(色あせた栄光)と呼び、警鐘を鳴らしている。
グランド・プリズマティック・スプリング / Grand Prismatic Spring
オールド・フェイスフルから北に約11kmの位置にあるのがグランド・プリズマティック・スプリング。園内最大の温泉で直径は約113m、深さは37m、水温は64度〜87度で、毎分2.12m³の温泉を噴出している。
マンモス・カントリー
マンモス・カントリーは、公園北西部に位置し、マンモス・ホット・スプリングと呼ばれるこのエリアは地下から吹き上げられた温水に含まれた石灰成分が蓄積され形成された石灰棚が有名。
旅行本などには毎日2万トンの石灰が運び上げられて〜、などと書かれているが現在は活発な活動をしているテラスは少なく、有名なメイン・テラス、ミネルバ・テラスも枯渇している。
リバティキャップ / Liberty Cap
1871年、ヘイデンの探検隊が発見したリバティキャップ。高さ約11m。以前は温泉が湧き出ていたが、堆積物によって噴出口が塞がれてしまい、いまでは枯渇している。
名前の由来は、フランス革命の時に着用していた帽子に似ていることから「リバティキャップ」と名付けられた。
ミネルバ・テラス / Minerva Terrace
パレット・スプリング / Palette Spring
Palette Spring at Mammoth Hot Springs / YellowstoneNPS
カナリー・スプリング / Canary Spring
New Canary Spring (30 May 2013) 3 / James St. John
ルーズベルト・カントリー
ルーズベルト・カントリーは、公園北東部にある地域。名前の由来は公園設立に尽力した第26代大統領セオドア・ルーズベルトがこの周辺でキャンプしたことから付けられた。西部開拓時代の古き良き時代を再現したエリアで、当時を再現した駅馬車ツアーが出ている。タワー滝とスペシメン・リッジの珪化木が有名。
タワー滝 / Tower Fall
Yellowstone Tower Falls / sociotard
タワー滝は公園北東部のイエローストーンリバーとタワークリークの合流地点から約910m上流にある滝で落差は40m。
キャニオン・カントリー
キャニオン・カントリーは、公園東部に位置。イエローストーン国立公園の名前の由来となったイエローストーン大渓谷やヘイデンバレーが有名。
イエローストーン大峡谷 / Grand Canyon of the Yellowstone
Lower Falls from Artist Point / YellowstoneNPS
イエローストーン大峡谷は、長さ32km、深さ240〜360mで川の浸食によって1万年かけて作られた。写真奥に見えるロウアー滝は落差93mもある。
北側の崖をノースリム(写真右側)といい、南側の崖をサウスリム(写真左側)といいます。両側にいくつかビューポイントがあり、いろいろな角度から大峡谷を楽しむことができる。ロウアー滝に一番近づくことができるのはアンクルトムズトレイル(Uncle Tom's Trail)で滝壺の側まで歩いて行ける。しかし階段が急なので帰りはキツイかもしれない。
ヘイデンバレー / Hayden Valley
レイクとキャニオンの間にあるのがヘイデンバレー。イエローストーンリバーがゆっくり流れ、大草原が広がる美しい低地。草原には動物たちが集まり、ムースやバッファロー、ハクトウワシの姿を確認することができる。
マッド・ボルケーノ / Mud Volcano
レイク・カントリー
レイク・カントリーは、公園南東部に位置し、イエローストーンレイクを中心とするエリア。
イエローストーン・レイク / Yellowstone Lake
Southest arm of Yellowstone Lake / YellowstoneNPS
イエローストーンレイクは、かつて大噴火した火山の底に水が溜まってできた湖。
海抜は2357m、面積は約360km²。
ブラック・プール / Black Pool
ブラック・プールはイエローストーンレイクの西側ウエストサムにある温泉。少し前までブラック・プールは名前の通り黒色(正確には濃い緑色)だった。しかし1991年に突然水温が上昇して黒色を形成していたバクテリアが死滅して青色に変わった。名前は当時のまま残してある。
アビス・プール / Abyss Pool
Abyss Pool, West Thumb Geyser Basin, Yellowstone National Park / Dino Trnjanin
底が見えないほど深いからAbyss(深淵)poolと名付けられた。深さはおよそ16m。
フィッシング・コーン / Fishing Cone
Geyser in Yellowstone Lake / manufrakass
湖の西側のウェストサムにあるのがフィッシング・コーンと呼ばれる温泉。その昔、漁師がここに魚を入れて茹でていたこともあるとか。現在は釣りも調理も禁止されています。
イエローストーン国立公園の登録基準
登録基準(ⅶ)
世界最大の間欠泉群、イエローストーン川のグランド・キャニオン、数々の滝、野生動物の群れなど、イエローストーンは素晴らしい景観の宝庫である。
登録基準(ⅷ)
イエローストーンは、地球の進化の歴史を研究し、理解するための世界有数の場所である。この公園には、世界でも類を見ない表層地熱活動、何千もの温泉、泥火山、噴気孔があり、世界で活動中の間欠泉の半分以上が存在する。公園内の豊富な化石堆積物からは、小さなシダやイグサから大きなセコイアやその他多くの樹種まで、150種近くの化石植物が確認されている。また世界最大のカルデラ(45km×45km)もこの公園内にある。
登録基準(ⅸ)
この公園は、地球の北半球の温帯地域に残る、数少ない手つかずの大規模な生態系のひとつである。公園内のすべての植物は、直接管理されることなく、自然の遷移によって進行することが許可されている。森林火災は落雷で発生した場合、火災の自然高価を定期的に主張させるために、可能な限り燃焼を許可することが多い。公園のバイソンは、かつてグレートプレーンズを覆っていた群れの中で唯一、継続して放し飼いされている野生のバイソンで、他の野生動物とともに公園の最大の見所のひとつとなっている。
登録基準(ⅹ)
イエローストーン国立公園は。北米有数の希少動植物保護区であるとともに、生態系プロセスのモデルとしても機能している。グリズリー・ベアは、世界で最も集中的に研究され、最も理解されているクマ科のひとつ。この研究により、生態系の相互依存関係がより深く理解されるようになった。公園の動植物を保護し、その個体数と分布に影響を与える自然のプロセスを守ることで、人間の影響を最小限に抑えながら生物学的進化をすすめることができる。
イエローストーン国立公園へのアクセス方法
イエローストーンの最寄りの空港は5つある。西口に近い空港はウエストイエローストーン空港、南口はジャクソンホール空港、北口はボウズマン空港、北東口はビリングローガン空港、東口はイエローストーン・リージョナル空港。メジャーなのはウエストイエローストン空港とジャクソンホール空港。残念ながら日本からの直行便はないので、ロサンゼルスかシアトル、ソルトレイクシティ経由になる。
例えば、成田からデンバー経由ジャクソンホール空港へ行く場合はおよそ14時間30分で到着。空港からイエローストーン国立公園までは自動車で1時間30分くらいで到着する。
ソルトレイクシティから車で行く場合は、およそ6時間かかる(ウエストイエローストーン経由の場合)。
イエローストーン国立公園周辺のホテル情報
Old Faithful Inn / YellowstoneNPS
ホテルは公園内に9箇所あるが、どこも事前予約必須。飛び込みで行っても泊まることはできないと思っておいたほうがいい。その中でもオールド・フェイスフル・インは大人気。1年前から予約は可能なので、余裕をもってプランを立てましょう。
以下のWEBサイトより予約可能。
http://www.yellowstonenationalparklodges.com/lodging/reservations/#top
公園内のホテルが確保できなかった場合は、公園入口の街であるウエストイエローストーンやジャクソン、リビングストンに泊まるのもあり。公園内のホテルは環境を破壊しないように最低限の設備しかないところがほとんどなので、現代っ子はゲートシティに泊まった方が懸命かもしれない。TVもあるしWi-Fiもある。
イエローストーン国立公園までの旅の予算
冬はほとんどのエリアが閉鎖されるので、5月〜10月が旅行シーズン。6月でも雪が降ることがあるので寒さ対策は必須。
東京発のツアー料金はおよそ¥300,000〜¥450,000(7〜9日)。グランド・ティトン国立公園もいっしょにまわるプランが多い。
個人旅行の場合は、飛行機代¥100,000〜、ホテル代1泊¥10,000〜、レンタカー1日¥9,000〜、入園料は7日間有効のパスで自動車1台につき$30(何人乗っててもこの値段。16人以上が乗れるバスは別料金です)、バイク$25、徒歩、自転車、スキーで入る場合は一人につき$15(16歳未満は無料)。※入園料は年々上がっております。この価格は2015年12月現在。
一番安い金額で考えると、、、
飛行機代¥100,000+ホテル¥10,000x4(4泊)+レンタカー¥9,000x5(5日)+入園料$30 = ¥188,650
ツアーか個人か、、、なかなか悩ましいですね。安く抑えたいけど個人旅行が不安な方は、ソルトレイクシティまで自分で行って、ソルトレイクシティ発のツアーに参加するのもありかと。多少は節約出来るかなぁと思います。